人材ビジネスコラム

介護の人手不足、やや緩和?

本間 俊典[著]  / 2009-08-24  / ブックマーク はてなブックマーク Yahoo!ブックマークに登録

 介護・福祉分野の人手不足が少し緩和されてきました。厚生労働省が発表している有効求人倍率によると、介護職を含む「社会福祉専門の職業」がこれまでの1.3-1.9倍から徐々に下がり、5月には求人数約7万5700人に対して求職者は8万2000人、求人倍率は0.92倍と初めて1倍を割り込んだのです。
 6月も0.95倍とほぼ同様で、全職種の求人倍率が0.43倍という状態の中での0.9倍台ですから、「足りている」とは言えないまでも、慢性的な人手不足に悩んできた介護施設などには朗報かもしれません。
 最大の要因は、製造業などの大量人員削減で失業者が急速に増え、職を失った人々やその家族が介護・福祉分野で就業を始めたことでしょう。
 また、政府が4月から実施した介護報酬の3%引き上げも効いており、多くの施設がその大半を従業員の賃上げ原資に充てています。また、主要ハローワーク内に「福祉人材コーナー」を設け、相談、紹介、セミナー、現地見学などキメ細かい対策に乗り出したことも奏功しているようです。

 もう一つ、見逃せないのが人材ビジネス業界の取り組み。大手のニチイ学館などが未経験者も含む人材確保に乗り出し、スタッフサービス・ホールディングスもホームヘルパー2級の資格取得をめざすプロジェクトを始めるなど、各社の努力が徐々に実を結びつつあるようです。
 しかし、求人倍率こそ緩和されたと言っても、5月、6月とも実際の就職件数は1万件程度。これはハローワークだけの数字ですから、実際にはもっと多くなるはずですが、新規求人倍率は1.5倍前後と依然としてかなり高く、各施設の足元の人手不足が解消しているわけではありません。

 長期的に見ると、日本の高齢化は今後、加速度的に進み、厚労省の試算では2025年までにさらに100万人前後の介護要員などが必要と試算しています。
 賃金水準の一層のアップ、労働条件の改善、能力開発制度の充実など、政府は今回の不況を機に大々的な要員確保に乗り出しており、政治の場でも与野党を問わず、介護職場の拡大・充実は最優先の課題であることを認識しています。
 今こそ、人材ビジネスの出番ではないかと思います。訪問介護のコムスンが不正によって事業清算に追い込まれたことは、かえすがえすも残念でなことでしたが、だからと言って業界のマッチング機能や職業訓練機能まで否定されたわけではありません。

 業界も、派遣法改正による規制強化という重大な問題に直面していますが、ただ「規制強化反対」を叫ぶだけでなく、福祉分野における社会ニーズに応えるビジネスを展開しているという、前向きな活動も積極的にPRすべきではないかと思います。

著者プロフィール
本間 俊典

「月刊人材ビジネス」編集委員、経済ジャーナリスト
本間 俊典

 72年一橋大学経済学部卒業。75年4月毎日新聞社入社。主に経済畑を歩き、機械、貿易、東証、外務省、経済企画庁(現内閣府)、通産省(現経済産業省)などを担当。経済部、エコノミストを経て2001年10月から編集委員。06年3月退社、4月から本誌編集長、経済ジャーナリスト。

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