「新」人材派遣物語   Vol.5

  25回を数えた「派遣スタッフ満足度調査」に思うこと

   月刊人材ビジネス主筆    三浦 和夫


派遣スタッフ満足度調査結果が注目されています。
小誌がどの会社のサービスが良いかを競う人材派遣業界初の調査を実施して以来12年が経ちました。
5月号の掲載で25回を数えた同調査は派遣で働く人たちに支持され、登録先選びの指標となっています。
今号のコラムでは調査を開始した経緯と実績を紹介します。




派遣元のCSを初めて考案


  今から14年前の2002年のことです。派遣事業の許可事業所数は7000事業所を数えてさらに増加する傾向が見えていました。景気もまずまず良かった時代でした。登録スタッフの数も増えていました。

  しかし、求職者たちにとってどの派遣元を選んで登録して良いかがわからない状態がずっと続いていました。指標は求人誌の募集広告のサイズの大小とかコピーくらいしかなかったのです。

  そんな2002年(平成14年)の春でした。当社のグループ会社で月刊誌等の販売会社であるオーピーエヌの浦登記(うら・とき)社長(当時、以下浦さんと略称)が「人材派遣業界もそろそろ『スタッフ満足度調査』が必要ですね』」と筆者に進言したのです。

  彼女は、それまでの3年間、「顧客満足ってなあに?」の著者で知られる故佐藤知恭・白鴎大学教授に師事して顧客満足に関して勉強をしていました。その間、アメリカ・ロサンゼルスのトヨタUSAやリッツカールトンなどの現場のサービスを見聞するなどその熱の入れ様は並ではなかったのです。

  私は浦さんの提案を受け入れました。“派遣業界の満足度調査はどのように実施するのだろうか?”―。私の関心は高まりましたが、その反面、サービスの良し悪しについて私どもの顧客に順位をつけるとなると摩擦が生じかねません。少し心配になっていました。

  まもなく、浦さんが派遣で働くスタッフの皆さんへの質問の概要を作成して見せてくれました。18の質問項目で構成されていました。派遣登録の問い合わせ電話?登録の受付?就業開始?契約終了までの業務フローにそって5段階評価の満足度を聴く内容でした。評価ごとに点数を決めてポイント数で競う仕組み。

  私は「さすが、浦さんですね、勉強の成果が見事に出ていますね」と評価し、第1回スタッフ満足度調査結果の月刊誌掲載号は2002年11月号で行うことを決めたのです。




事前の根回しで派遣元企業と合意


  同号で第1回調査結果を誌面化するには夏場にインターネット調査をしなければなりません。その前に、より多くの回答者が予想される大手の派遣会社に事前に了解を取り付ける必要があります。前触れもなくいきなり会社名を出しての誌面化は専門誌の対応としていかがなものかと思ったからです。

  私は大手複数社の社長または責任者と会い、派遣スタッフ満足度調査の意義と誌面化のイメージを説明しました。その結果、意外にも代表者の皆さんは賛同しました。「結果を知るのは恐いけれどもそれを避けては通れませんね。緊張しながら調査結果を期待しています」と語ってくれました。




たかが339人、されど339人の回答


  第1回調査に回答してくれたスタッフの皆さんは339人。女性82%、男性18%。関東地域47%、近畿25%、東海10%。他は5?1%でした。第25回調査に応じた2000人と比較するとわずかな人数です。当時の私は“されど339人も第1回調査に回答してくださった”と前向きに評価しました。

  調査結果、スタッフの「再就業率」(今後もここで働きたい)の1位はテンプスタッフ、「口コミ率」(友人への口コミ紹介)の1位はパソナでした。

  過去25回の調査の中で先の2部門で1位を最も多くとったのはパソナです。同社は再就業率1位を6回、口コミ率1位を12回獲得。リクルートスタッフィングは再就業率1位を5回、口コミ率1位を7回獲得しています。

  直近の第25回調査(本誌5月号掲載)では、再就業率の1位はテンプスタッフ、口コミ率の1位はテンプスタッフとリクルートスタッフィングでした。

  派遣スタッフ満足度調査の意義は、“自分たちのサービスが同業他社と比較してどうなのか?”、“各CSアイテムの優劣はどうなのか?”を客観的なデータで知ることが出来る点だろうと思います。また、営業担当者の場合は成果を数値化しやすいですが、登録面談と仕事紹介などのコーディネーション部門ではそれが困難でした。しかし、調査の各CSアイテムの中で評価が可能となったため、「仕事に励みが生まれました」との声も聞かれるようになりました。




派遣先満足度調査も検討課題


  今では、有力な求人サイトが月刊人材ビジネス主催のスタッフ満足度調査結果を掲載するようになり、“良い派遣会社選び”の指標に使われているのです。この満足度調査を設計した浦さんにあらためて25回の調査を振り返っていただきました。彼女は次のように話しています。

  「“いい派遣会社の選び方を知りたい”という質問は、実は派遣スタッフよりも派遣先からの方が多かった記憶があります。ただ、顧客満足を勉強し始めていた私は、CS(顧客満足)=ES(従業員満足)だと直感。出先で孤軍奮闘する派遣スタッフの満足度を知ることがその回答だと考えました。そしてこれは今も変わらぬポリシーです。」

  さて、しっかりと業界に根ついた次なる課題は何か?

  2つあります。1つは、大手に集中しがちな満足度調査結果を母数が小さいために会社名を公表していないが中堅規模の派遣元についてどのように取り扱い、公表していくべきか。

  もう1つは、派遣元サービスに対する派遣先企業の満足度調査の実現です。これについては、月刊誌創刊30周年を契機に実現する方向で検討したいと思います。

(次号に続く)

(この記事は、月刊人材ビジネス2016年6月号に掲載されたものです)


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